はたらくおじさん
2020年 07月 22日
今の学習指導要領からはオミットされてしまったが,昔の小学校のカリキュラムには社会科に関する授業が組み込まれていた。
先生が教室の上座に鎮座するデッキに重々しくVHSのカセットを装填し,逸る気持ちを抑えられない児童に向けてNHKの『はたらくおじさん』を放映する。
画面にはタンちゃんとペロくんを乗せた気球が現れ,いろいろな業種に従事する人達の奮闘ぶりをリポートする。
児童は目を輝かせてそれらの放送を拝聴し,放送が終わった途端に誰からともなく今みた番組に関する篤い議論を展開し始める。
昔から我々はグループワークやアクティブラーニングを実践しているのだ。
今の自分はあのころに夢見た立派な「はたらくおじさん」になっているのだろうか。
オジサンになったのは間違いないところなのだけれど…。
いい歳をしたオジサンが本気で臨むオートバイ遊び,それが『チャレンジ 1,000』。
60年前につくられたOHVのカブで,1,000kmを 24時間で奔りきる。
良識的な大人からしたらなんとも無謀なチャレンジである。
そうなのだ,だれでも出来るようなことに漢(おじさん)は逸らないのだ。
チャレンジでは,途中で雨に降られても雨具に着替える時間はない(タイムロスが惜しい)。
なので,同ツーリングではそもそもレインスーツに頼らない装備を検討する。
足下は信頼のガエルネのFUGA。
1日くらいの雨であれば,これでなんとか浸水は免れることができるだろう。
ただ,もう少し丈の長い方が安心か。
トップスはモンベルのハイデュラジャケット。
これも1日くらいの雨であれば身体を濡らすことはない。
問題はボトムス。
どこかでツーリングに適したパンツを購入しなければ…。
そこで思いついたのが「はたらくおじさんの店」。
最近は質のよい商品がいろいろとナインナップされていると聞くからね。
さっそく同店でパンツを購入。
CORDURAナイロン製で,ひざには薄いニーパッドも装備している。
なにより安い。
安さにまかせてキャンプ用のクライミングパンツも買ってしまった。
いい歳をした清く正しいはたらくおじさんですもん,たまには大人買いをしてもいいよね
というハナシ。
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by noritoyuka
| 2020-07-22 10:00
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月夜の晩ばかりだと思うなよ
2020年 07月 14日
本店から出向してきた不逞の輩と対峙していたところ,役員から「もう少し大人の態度を示した方が…」と諭された。
自分の方に道理の在ることが判ったら,大局を見て自ら折れるのが真の意味での横綱相撲だと。
件の輩と刺し違える(一矢報いたうえで退職する)覚悟でいたが,考え方をあらためた。
いかんいかん,まだまだ器が小さいね。
ひるがえって「チャレンジ 1,000km ツーリング」。
いくら 12V化しているとはいえ,60年前の車両のヘッドライトで不案内な夜道を走るのはなんとも心許ない。
そこで,PETZLのLEDライトを用いて車両へ光源を増設することにした。
リチウムイオン電池を電源とするのも,光源の冗長化に一役買ってくれることになる。
ステーの制作をお願いするのは安心の『BLUE MOTORCYCLE』。
オーラルでの発注で精度のしっかりとした製品が仕上がってくる。
精度の高いシャーリングと収まりのよいフィニッシュ。
すばらしい。
チャレンジの開催に関連して心配なのは大雨による山間部の被害状況。
安房峠やR41が崩れたというニュースを目にするにつれ心が痛む。
新型コロナによる被害拡大も大変だけど,気候変動による自然災害の多発も同様に心配だ。
クラブのリーダーに従ってボランティアへも参加しなければならないな。
それにしても職場の苛政対応。
週末はチャレンジツーリングの準備に掛かるつもりであったがそれもままならない。
「艱難(後ろ向きの仕事)に接することによって少しずつ珠に近づいているのかな」と思うことによって溜飲を下げたというハナシ。
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by noritoyuka
| 2020-07-14 10:00
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すきまテープの半分はやさしさで出来ている
2020年 07月 07日
「オグシの寂しさ」の進行と共に「ヘルメット装着時の頭痛」が増してきた。
毛量と痛覚の間にはリニアな因果関係があるのだ。
脳天大神にお詣りはしたものの,蔵王権現様はそう簡単にお願いを聞き入れてはくれないらしい。
この状態では,チャレンジ 1,000kmの走行にも大きな影響を及ぼしてしまう。
どうにかしなければ。
バ○ァ○ンを服用するといった対症療法では根本的な解決になっていない。
ましてや 24時間以上の運転を強いられるチャレンジでは眠気を誘発する鎮痛剤の使用は御法度だ。
いろいろとネットを検索していたら「タオルをテンプル(ヘルメット内側)に敷き詰めるといいらしい」というありがたい情報に触れることができた。
孫悟空の頭にある金冠はテンプルを締めつけて苦痛を与える道具ではなかったかな(こめかみを圧迫したら頭痛緩和に逆行するんじゃないのかな?)といった疑問が頭によぎりつつも,さっそく材料を調達しにホームセンターへ走った。
調達した緩衝材一式。
「消臭効果を併せ持つ備長炭入り」という名コピーにつられて当初は予定していなかった低反発ウレタンフォームまで買ってしまった。
頭の臭いも気になるような年頃になってきたんだよ。
既存スポンジのキンク部分。
地味にこういった部分が頭皮の血流を阻害すると踏んだ。
テンプル部分(キンク部分)に巻くすき間テープ。
98円なり。
おぉ,薄給サラリーマンの財布にやさしい価格設定だ。
すき間テープをぐるりと巻き,頂部にウレタンフォームをセットしてスポンジで仕上げる。
ビフォア/アフター。
さっそくこれを被ってテストライドにでる。
目指すは鳥羽のかりんとー屋さん。
サイクルコンピューターが示す速度も,車体のそれとほぼピッタリ。
バイパスを順調に飛ばすと遠くにデコラティブなお城が見えてきた。
テレビのCMで見たことのあるテーマパーク(いわゆるパラダイス)かな。
順調に奔っていると,突然「ガキッ」という音と共に後輪がロックした!
キョ・キョ・キョ・キョ・キョー!
甲高い音と共にゴム(タイヤ)の焼ける臭いが鼻につく。
なんとか転倒せずに車両を路の脇によけることができた。
トンネルのなかでロック(転倒)しなくてよかった~。
ガクガクぶるぶる。
ひととおり車両を点検したところ,なにも異常な点は認められなかった(エンジンもキック一発で始動したしチェーンもストレスなく回った)。
なんだったんだろう?
気を取り直してとりあえず先を急ぐことにする。
目的の店舗は閉まっていた。
がっかり。
駅の物産コーナーで土産(かりんとー)を買い求め,自宅に向けてきびすを返す。
帰りに我が社の姉妹店によって写真をパチリ。
距離を稼ぐために(ヘルメットのインプレをするために)もう少し遠回りして帰ることにする。
みそぎの町?
ちょっとよりみちを…。
どことなく三保の松原に似た雰囲気だ。
おぉ,ここが神話で有名な天の岩戸だったのか。
こういったところはYUKA氏の仮説つきで巡った方が面白そうだな。
帰りを急ぐことにする。
なにやら歴史のありそうな業モノ屋を発見。
こんどナイフを持ち込んで研いでもらおう。
そして酒素饅頭なるお菓子屋を発見。
さらにおみやげを調達する。
家に帰り着いてかりんとーと饅頭をYUKA氏に献上。
はたしてヘルメットによる頭痛は道中で一度も発生しなかった!
「ヘルメット頭痛に悩まれているライダー諸氏は一度ウレタン充填をお試しあれ」というハナシ。
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by noritoyuka
| 2020-07-07 10:00
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青空ガレージ
2020年 05月 17日
三重県の新型コロナウイルス感染症対策に係る緊急事態宣言が解除された。
職場の危機管理委員会でも「プラトー期に入った」との見解がほぼ固まりつつある。
ここで気を緩めてはいけないが(休日ではあるが)ちょっとだけ家を出て外の空気を吸ってみることにする。
ちょうど壊れたオートバイのメーターが直ってきたところだしね。
寂しいステムヘッド周り。
とっ散らかったヘッドライトの中。
ちょっと配線の劣化(硬化)がはじまっている。
こんど時間をみてハーネス類のリニューアルをしてみよう。
ケーブルにINOXを注して,
メーターを装着。
ハンドル周りのコンソールが蘇った。
美しい…。
はやく平穏な世の中を取り戻し,これにのって遠乗りに出かけたい。
「それでももう少しステイホームを続けよう」と思った緊急事態宣言解除後初の休日だったというハナシ。
と,ここに来てタコメーターとスピードメーターがテレコになっていることに気がついた orz。
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by noritoyuka
| 2020-05-17 23:00
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アーティスト
2020年 05月 01日
令和2年度補正予算(第1号)が成立した。
事業規模は117兆円(過去最大)。
国民皆給付金等への振り替えで紆余曲折があったものの,新型コロナウイルス禍で落ち込んだ景気にようやく浮揚策の一石が投じられたということか。
今回の予算,経済産業省や文部科学省の計画にあった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への真水の投入が目を引いた。
Society 5.0と共に最近になってよく耳にするようになった用語だ。
以前に受けた研修では,アナログがデジタルに置き換わる「デジタライゼーション」の一歩先を行く変革のことを指しているらしいということを学んだ。
テクノロジーによって生活や労働,会社の経営などを根本から変革することを指す用語であるんだとか。
そうなると頭をもたげてくるのがまたしても「雇用問題」だ。
せっかく苦労して手にしたスキルが必要とされない社会になってしまうんじゃない?
アナログ人間の自分はつとにそう思っていた。
そういった受講生の不安に対して件の研修の講師はこう答えた。
「陳腐化したテクノロジーにはアートに昇華する道が在る。」
「手書き」の文章は「ワープロ」や「OCR」にとって代わられたが,今では「書道」が崇高な芸術となった。
「馬」を用いた移動は廃れて「車」や「Uber」が台頭しているが,かわりに「乗馬」が上等な趣味に位置付けられた。
電気自動車や燃料電池車が珍しくない時代にあって,いつまで化石燃料を消費するオートバイに乗っていられるんだろうかと不安に思っていたが,そうか,我々には芸術家になる道が残されていたのか。
コロナ禍がおさまったら『オートバイ道』を極めるための旅に出よう。
景気浮揚予算成立の報を受けてふとそんなことを思った。
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| 2020-05-01 01:40
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紅いヤツ
2020年 03月 24日
世界が恋するホンダから,日本のカブ主あてに新製品のお知らせが送られてきた。
おぉ,噂に聞こえた「CT125(ハンターカブの後継機)」のカタログだ!
訳あって先代とはずいぶん前にドナドナしてしまったけれど,彼にはユックリながらもトコトコと全国のいろいろなところに連れて行ってもらったなぁ。
先代との懐かしい思い出が蘇る。
やっぱり世界のナイセストピープルは赤いホンダにのるのだな。
驚いたのは車両のパンフレットに車外品のパーツカタログが同封されていたところ。
すでにモリワキのモナカマフラーまでもがラインナップされているよ。
いかん,やっとのことで抑えていた物欲が,またふつふつと湧き上がってきてしまっている…。
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by noritoyuka
| 2020-03-24 12:14
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梅は咲いたか
2020年 03月 14日
桜はまだかいな。
新型コロナウイルスの蔓延が,国内はおろか全世界的な脅威となっている。
我が職場においてもいろいろな行事が軒並み中止に追い込まれ,それらの主宰や関係するスタッフの志気がみるみる落ちている(経済的損失も大きい)。
年度が明けて暖かくなったらこの騒動もピークアウトするのかな。
一日も早い事態の収束を願ってやまない。
そんな状況のなか,いち早い春の到来を求めて(クラスターの形成に注意して)近所へ梅を見に出かけてみた。
我がカブにも新しくナビゲーションを導入してみた。
これでもう道に迷うことはなくなった(到着予定時刻が推測できるのもありがたい)。
出発が遅くなってしまったが,お昼ご飯を食べに一身田へ向かう。
国宝の専修寺を通過して,
目当ての店に到着。
が,すでに昼営業は終わりを迎える時刻となっている。
おそるおそる暖簾を潜って店主に訊いてみた。
「今からのオーダーは無理ですか?」
「いらっしゃい,全然大丈夫ですよ。」
はた迷惑な客を店主は優しく迎え入れてくれた。
落ち着いた店内。
ホッコリと癒やされる。
日替わりランチ。
丁寧な作りでとても美味しい。そして安い。
お腹が満たされたので,しだれ梅を見るために南へカブを奔らせる。
会場にはすでに先客が大挙して押し寄せている。
きれいな車両だ。
ファンネルには風呂の栓?
オーナーはとても大事に乗っておられるようである。
リムとハブ,それとスポークの綺麗さならば我がカブも負けてはいない。
しだれ梅を観賞して「はる遠からじ」を実感する。
そして,チューブレス化したリムのシェイクダウン(リークテスト)をするため,さらにR23を南下することにした。
『近鉄宇治山田駅』
そろそろお腹が減ってきた。
近くにある地元で評判の食堂へ行ってみる。
千客万来。
店内は満席であったため,しばらく時間をおいて再訪することにする。
シャッター街となったアーケードの中にあってこの店だけが営業を続けている(とても繁盛している)。
なんでだろう?
そんなに深い時間ではないのに,食材が底をついたため自分が最後の客となってしまった…。
そして,地元民のソウルフードとなっている『からあげ丼』を注文する。
なるほどおいしい。
お腹も満たされたので,津ぅに向かって伊勢街道を北上する。
家に帰り着き,140kmを走行したところでエア圧を確認。
チューブレスリムにはいささかの漏れも認められなかった!
今夏の『チャレンジ1000』に向けて,夢が膨らむシェイクダウンができたというハナシ。
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| 2020-03-14 21:41
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鉄分の補給ふたたび
2020年 03月 06日
「鉄子」に「歴女」,そして「刀剣女子」まで。
最近の女子にいたっては,かつて「オジサン趣味」と呼ばれた分野のあれやこれやに多大な興味があるらしい。
そういった女子達が垂涎となる企画(鉄道と刀剣のコラボレーション)が静岡で催されていると聞こえてきたので,さっそく当地へ見学に行ってきた。
向かうのは遠州にある『天竜浜名湖鉄道』。
同鉄道は,昭和10年に開業した国鉄二俣線を沿革にもつ静岡県西部の第三セクターである。
『金指駅』
上屋とプラットホームが登録有形文化財となっている。
桑田佳祐のPV撮影(白い恋人達)が行われたのはここだったっけか?
この路線の蒸気機関車が引退したのは昭和46年のこと。
その後も電化されないまま現在に至っているため,線路にトロリー線が配架されていない。
コ~~リング・ユ~♪
駅舎付近には『バグダッド・カフェ』ばりの蒸気機関車用給水塔が今に遺っている。
ようやく目当ての車両がやって来た。
「TH2113」と「KATANA」のWフェイス
サイドビュー
車両の中へ
新型KATANAの販売価格は 1,512,000円。
薄給のサラリーマンにはちょっと手が出ない…。
キリンは鳴かない。
足るを知るものは富むのである。
雰囲気だけでも堪能できたので,充分に満足して駅をあとにすることができた。
せっかくなので,ちょっと駅周辺をポタリング。
遠州鉄道(濱松軽便鉄道)奥山線の遺構(国鉄二俣線を跨線するための陸橋跡)
もともと奥山線は二俣線に先んじて敷設されていたところであったが,後から交差を計画した二俣線(国鉄)は東海道本線の非常時迂回線と位置づけられたため,奥山線の方が陸橋を築いてこれを回避(跨線)することとなったらしい。
かつての「親方日の丸」と「ローカル線」の不均衡なパワーバランスを今に伝えるレガシーとなっている。
なつかしい…。
このデパートは今でも三重で操業しているぞ。
東の空に映る神々しいヨシュア・トゥリーのシルエットを確認し,朝のポタリングは爽快のうちに終了した。
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by noritoyuka
| 2020-03-06 01:44
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プロのなせる業
2020年 03月 02日
「芸は道によって賢し」
今夏の『チャレンジ 1,000』の完走(出走?)に万全を期すため,C105のチューニングとスープアップをプロの手に委ねることにした。
お願いしたのは静岡市にある『BLUE MOTORCYCLE』。
技術力の高さとセンスの良さが巷で評判のショップだ(おまけに良心的な価格設定だ)。
まずは各種ガジェット用USB電源の新設。
馴染みの薄い北関東・甲信越・東北等のコースを走るには(24時間での完走を目指すには),コマ図に代えてカーナビに頼る方が無難であるという結論に達した。
ハーネスの分岐点,及びアウトレットやトランスの設置位置にセンスの良さが光る。
各種補機使用時の電流変化も問題はなし。
続いてサイクルコンピュータ用ステーの制作。
実に見事な納まりだ。
ストロークが短くインジェクターの使用できないケーブルには昔ながらの方法を用いて給油する。
動きの渋かったドラムを分解して洗浄。
驚くほどスムースに動くようになった。
ハブの研磨。
リムの振れ取り。
そしてリムのチューブレス加工。
この作業では主宰に相当のお骨折りをいただいた(修正で6回ほどのタイヤ脱着を強いてしまった)。
おかげでパンク時のリカバリー時間が大幅に短縮されることになる。
なんちゃってラリーストには大変ありがたいモディファイだ。
完成!
車両は完璧。
大過なくチャレンジ完走を果たすため,あとは乗り手の体力増強が必要だ。
この夏に向けて体力作りに勤しむことを(体重を適正値にすることを)リニューアルなったカブに誓ってお世話になった店をあとにした。
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by noritoyuka
| 2020-03-02 01:14
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君子は豹変す
2020年 03月 01日
現在は「光の尖端都市」として世界の医学や物理学分野を牽引している浜松市であるが,そのものづくりの源流には豊田佐吉らが興した「織機産業」や山葉寅楠が創業した「楽器産業」などがあるということが広く世間に知られている。
これらの産業に次いで戦後の遠州地方を盛りあげたのが「オートバイ産業」である。
大戦後,27回にも及ぶB29の爆撃によって市街地の9割以上が焦土となった浜松市では,「やらまいか精神」をもった技術者達の手によってオートバイ産業が活況を呈した。
『浜松オートバイ物語』天野久樹著 より引用
「石橋を叩いて渡らない」という堅実で慎重派の三河人と違って遠州人の気は逸い(短い)。
とりあえずやらまいか!
遠州の技術者達のなかには「石橋を渡ってから叩く」といったタイプの人間が多いのだ。
本田宗一郎が浜松市山下町に本田技術研究所を構えて自転車用補助エンジンの製造を始めたのが昭和21年のこと。
その7年後の昭和28年頃には30社を超えるメーカーが浜松に林立し,遠州地方は一躍「オートバイの町」としての名を馳せることになる。
ヤマト商会の『ヤマトラッキー号』,北川自動車工業の『ポートリーロビン号』,そして加藤鉄工所の『ストロング号』などが新聞等の広告を賑わした。
本田宗一郎のアート商会時代の弟子である伊藤正も,同市上池川町に丸正自動車を設立して(現在でも多くのファンを持つ)『ライラック号』を世に送り出している。
これらのメーカーは時代の趨勢を受けて整理統合され,現在もなおオートバイを生産し続けているのは ホンダ,ヤマハ,スズキの3社のみである。
一時たりとはいえ数々のレースでホンダなどを打ち負かした丸正自動車(かの伊藤史朗のライディングによって第1回浅間火山レースを制した)も,昭和36年に会社を畳んだ。
丸正自動車の設計責任者であった溝淵定は,ブリヂストンに移籍して同社の勃興に大きな力を発揮した。
やがてブリヂストンが本来の生業であるタイヤや自転車の製造に傾注するようになると,溝淵は台湾に異動して現在まで続く同国のモペット製造の礎を築くことになる。
機をみるに敏。
台湾から日本に戻った溝淵は,東海電装の技術責任者としての重責を担う傍らで,丸正自動車の同窓である請井由夫と共に新機軸のギョウザ製造機を開発した。
そういった沿革をもつ餃子センターへ,やらまいかスピリットがたっぷりと染みこんだぎょうざを食べに行ってみた。
ぎょうざ製造メーカーのアンテナショップ。
製造機の手による餃子,なかなか美味しくて食べ応えがある。
ついでに焼きめしとラーメンも注文。
いにしえから連綿と続く技術者達の魂を目のあたりにして(胃袋に納めて),大満足のうちにセンターをあとにすることができた。
現在の浜松市は,「光の尖端都市」であるとともに「餃子の街」となっているのである。
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by noritoyuka
| 2020-03-01 03:30
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